26人が本棚に入れています
本棚に追加
「えーっと、……俺、一応男の子なんで」
「ここにいる奴らはみんな男だろうよ」
「……“トラブル”とかとは、あまり関係がないかなー、って。見かけたらお知らせします」
適当に愛想笑いをすると、物凄く胡散臭そうな目。その上舌打ちまでされた。
……せっかくのイケメンが台無しだ。
先程から些か横暴な言動のこの先輩は、見た目だけは今時のおしゃれ男子的な黒髪イケメンだったりする。
制服を着崩しているわけではないけれど、耳にいくつか着けているピアスのせいかすごく雰囲気がある。多少冷たそうではあるけどいい人そう? なのに。
「そんなツラで、男の子なんで☆とか言われてもなぁ」
「なんすかそれ」
「背も低いし」
「いやそれ先輩がやたらデカいだけですからね?」
一応174cmはあるのだから断じて低くはない。……はずだ。
明らかに180overな先輩に苛ついていると楽しそうに笑われた。なんていうか、地味に やなやつ、か。
「お前みたいなのでも襲いてぇってやつらはざらにいるってことだよ」
今度は直接ペットボトルでごつん、と。
──襲いてぇやつ、とは。
クラスにも何人かいるチワワみたいなちまいのならまだしも、なにが悲しくて俺みたいなのを女役にあてがわなければならないのか。
今までの人生でそれなりに告白もされ彼女もいたけれど、男に好きだと言われたこともましてや彼氏がいたこともなかった。あるわけがなかった。
女に好かれる自覚はあっても男に好かれた経験はない。
この学園に入学して自覚を持てと言われたことは何度かあったけれど、今までそういう経験が全くない俺に、そこまでの適応能力があるかと言われたら首を傾げるしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!