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それにしても──
問題はこいつなんだよなぁ、と猫の頭を撫でれば、足元にまるまって眠っていたそいつが気持ちよさそうに目を細めた。……やっぱりかわいい。
最初から懐かれてはいたけれど、1ヶ月半も通う内に情も愛着もわいた。
寮に連れて帰ることをあれからも何度か考えたけれど、同室者が猫アレルギーだと聞くとそうするわけにもいかない。そもそも寮はペット禁止だったような気もする。どうしよう。
「──誰か連れてくるとか」
そんな俺の考えを知ってか知らずか、隣に座る先輩がため息を吐きながらそう言うのが聞こえた。なんていうか、さっきからこの先輩にはため息を吐かれすぎな気がする。俺はそんなにだめなやつか。
「うーん」
「あんまりこの辺をうろちょろしてほしくはねぇが一人よりはマシだ」
「でもみんな食堂組だし……」
そう、食堂。──学園関係者であれば朝昼夜問わず誰でも利用できるそこは、種類も豊富で味も良いため利用する生徒は多い。
一度だけついて行ったことはあるけれど、あの雰囲気がどうにもダメだった。
この学園の縮図、とも言えるような気がしたそこは、なんというか、とても濃かった。……とても。
高校からの外部生が少ないせいか視線は痛いし生徒会とやらが入ってきたときの騒音といったらここはどこだアイドルのコンサート会場かといった感じで。
それからというもの、一応自炊もできる俺は(本当にやっててよかったと思ってる)弁当をつくるか学園内にあるコンビニで買うかで食堂とは無縁の生活を送っていた。
「放課後は委員会とか部活とか大変そうだし」
相変わらず猫を撫でながらつぶやくと、放課後まで来てんのかよ、と呆れられた。あ、またため息。
「………せめて昼だけにしろ。友達のいない荻野クンのために、俺が一緒に飯食ってやるから」
いやいや頼んでねぇし、と先輩を見れば再度ペットボトルでごつんとされた。
さっきからこの先輩は人の頭をなんだと思っているのだろうか。
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