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業務に追われ講堂裏での出来事なんてすっかり忘れていた新緑の季節。
思い出したのは、やっと仕事も落ち着き、自分自身も風紀委員長の業務に慣れてきた頃。
確実にわかってない返事をした要注意人物のその後が気になり、あの時と同じ昼休みに同じ場所に足を運んだ。
同じように講堂裏の芝生に座る1人と1匹。
「───…また来てるよ」
あれだけ注意しても危機感をもたないやっかいな後輩。仕舞いには自分が危ないのであれば先輩も同じだと言い出した阿呆に事実を伝えると、やっと多少は真剣な返事が返ってきた。
「……気をつけます」
それからはなんだか難しい顔をしつつも猫を見つめる後輩。猫に触れている時には穏やかに和らぐ表情。
そんなに猫に会いたいのであれば誰かと一緒に来いと呆れながら伝えると、とりあえず外部生よろしくこの学園にまだあまり馴染めていないのであろう返答が返ってきた。
仕方ないから昼休みに来てやると伝えたのは、こいつがここに1人でいてトラブルが起こるのが面倒だと思ったからだ。
──だったら適当に同じ1年の風紀でも来させればいいかと自分で自分の言葉を考え直していると、問題の後輩の何とも嫌そうな視線に気づく。
とりあえず生意気な後輩を小突きながら、明日から昼はここに通ってやろうと決めた。
風紀委員長が直々に監視役だなんて、有り難く思え。いまだに不服そうな後輩を横目に、少しだけこの状況を楽しんでいる自分に気づいた。
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