1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふむ。つまり、だ。想い人に贅肉と地味な人間は嫌いと言われたのか。いいじゃないか。そんな外面で比較するようなやつ。こちらから願い下げだ」
「いやぁぁぁ、ひどいっ。まだ好きなのにぃぃい」
「いや、どこに好きの要素がある」
「だってかっこいいもん」
「お前も外面で選んだのか。どっこいどっこいだな。次からは内面も見るべきだ。良い勉強になったじゃないか。ではな」
「待って! お願いします。その、天狗様のピチピチの肌とサラサラな髪を私に下さい!!!」
「阿呆か。人間と作りが違うし、くっつくな」
「あぁぁぁ、神様はどうしてそんな恵まれてるのぉぉぉ」
「比較する時点でお前はダメだな。それに俺は神じゃなくて天狗だ」
「天狗様でも恵まれすぎてるぅぅう」
またギャンギャン泣き出した。流石に耳を塞ぐ。そもそもこの人型も人間を怖がらせないように化けているだけだ。人間は本当に化かせやすいな。
折角の神眼も持ち腐れだ。見える奴に久々に会えたがこんな軟弱な奴だとは。主殿に知らせるのはやめよう。門前払いもいいとこだ……。
あ、そうか。
「ふむ。外見は専門外だが、そのウジウジした性根を治すことは可能だぞ」
「ふへ、どういうこと……」
「しかしそれには対価がいるな。おい、何か持ってないか?」
「え、何かって、お金はちょっと……」
「供えるもの、だ」
「供えるもの? あ、お供えね。お菓子ならあるけど」
「じゃあそれを寄越せ」
「えー。はい。渡します」
人睨みしたら、角張った風呂敷からゴロゴロといっぱい出てきた。殆どが手作りのようだが、食べ物しか入ってないのか、その中は。これは流石に、
「多すぎやしないか」
「え、いつも夕飯前はこのぐらい食べるよ」
なるほど。外見も治すことが可能な気がしてきた。
「よし、では、これを全部頂こう。そして貴様に暫く憑いてやろう。ありがたく思え」
「は? 憑くって、どゆこと?」
「安心しろ、とってくやしない。俺は食通だ。お前は不味い」
まだ、な。さて、久々の荒療治だ。
「え、うそ。どういうこと。なんで、なんでそうなるのぉぉお!!!!」
一際、甲高い声あげて、人の子は地面に倒れていった。
全く、手のかかる奴だ。
最初のコメントを投稿しよう!