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「篠山くん…!私篠山くんを好きになったおかげでこんなに変わることができて、本当に感謝してるし、本当に好きだなって思ったの」
ひとりで戸惑っていると、以前より少しハキハキとした口調で彼女はそう言った。
「うん」
「だから、もう聞き飽きちゃったかもしれないけど言わせて…私は篠山くんのことが好きです。私と付き合ってくれませんか?」
俺は正直ゆらいでいた。少し間を作ってしまった。答えを決めて声にしようとしたその時、彼女が俺の言葉を遮った。
「篠山くんに他に好きな子が居るのは知ってる。でも…私じゃダメですか?やっぱり私が男だから…」
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……男?
こんなに可愛いのに?
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「え…???男?」
さすがに頭が追いつかなくて声に出した
「え??普通に女の子だと思ってた、制服もスカートだし名前も男じゃなかったような」
「あ…緊張して今までそのこと伝えてなかったかもしれない…ごめんなさい。私は生物学的には男だけど、性自認は女性で恋愛対象は男性、中学の時から女として生きているの」
「そっか…」
「うちの学校はそういう配慮がされるって有名なの。玲央奈って名前は確かに女の子と間違えられることも多いかも」
「なるほど…」
全然知らなかったし、全く気が付かなかった。
彼女を男だと知ってもなお、俺は彼女のキレイな肌、控えめでかわいらしい笑顔、スタイルに釘付けだった。
「今さ、岡野さんが男って言う前、俺ちょっとOKしようかなって思ってたんだ。でそれ聞いてからもっかい考えた」
「…」
「俺のためにめちゃくちゃ努力してキレイになって、キレイになってからも謙虚なところは変わらなくて、やっぱりそういう所、すごい良いなって思った」
「それじゃあ」
「こんな俺でよければ、よろしくお願いします」
「…ほんとに?嬉しい…こちらこそ、よろしくお願いします」
俺の背中から吹いてきた心地よい夏の風は彼女の頬をさらりとかすめ、キラキラと輝く夏色の空へと消えていった。
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