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入学後の告白ラッシュが終わってから1ヶ月、俺はまた同じ体育館裏に呼び出された。
久しぶりだな、なんて事を考えながらいつもの体育館裏へ向かった。
「篠山くん、来てくれてありがとう」
そこには黒髪セミロングの女子生徒がいた。
前髪は眉毛が隠れる程度に切りそろえられているがどこか重たい印象のある髪型だ。
ニキビのせいか度のキツいメガネのせいかは分からないが、決して美人とは言えない。しかし鼻は高く端的に言うとかなりハッキリとしたタイプの顔立ちである。
初めて会ったと思ったが、ニキビの感じに心当たりがあった。
「えっと…もしかして前もここで会った?」
「うん、1ヶ月前にね」
彼女は控えめにふふっと笑いそう答えた。
「やっぱり。何か印象変わったね」
「そう…かな、ありがとう」
少し照れながら言い、彼女は続けた。
「私、篠山くんに振られてから凄く落ち込んだんだけど、どうしても諦めきれなくて。篠山くんの好きな子の特徴を思い返してたら、確かにこんな私じゃ釣り合う訳ないって思ったの。だからそれから頑張ろうって決めて色々努力してみたんだ。」
「そっか」
「まだまだ頑張りが足りないとは思ってるんだけど、どうしても篠山くんが好きだなって気持ちが止められなくて。また呼び出しちゃった。ごめんね」
「いや、全然いいよ」
「篠山くん。私はやっぱりあなたの事が好きです。だから、私と付き合ってくれませんか?」
2度あることは3度も4度もある。
不毛な3度目以降が起きないよう、俺は正直な気持ちを彼女に伝えることにした。
「岡野さんの努力はすごいと思う。…けどごめん。俺、肌キレイな子じゃないと好きになれないんだ」
「…」
「体質とかあるのも分かってるよ。だけど肌ケアちゃんとしてないのかなとか思って冷めちゃうんだ。どんなに美人でも。最低だよな、ごめん」
「そっ…か。少し肌にも気を使うようにしたんだけど、まだ、ニキビあるもんね…」
俺の言葉を聞いて俯いていた彼女は、その後数回深呼吸をしてから明るい声のトーンでこう言った。
「ありがとう!篠山くんのそういう所、もっと好きになっちゃうよ。ズルいよ」
最後の方は半分泣きそうになりながらも彼女は笑顔だった。
「いや、こちらこそありがとう。こんな俺を好きになってくれて」
「いえいえ、どういたしまして。それじゃありがとう、またね」
またしても彼女はふふっと笑い、こちらへ小さく手を振りながら体育館の角の向こうへ消えた。
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