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帰宅後、ずっと考えていた。「覚えてないの?」自分は娘と、何か約束したのだろうか。アクセサリーならいつか好きな男に買ってもらえばいいだろうに。その方が幸せ・・・
あれは12歳の誕生日。イチゴのケーキを食べ終えた後、胸元にあるペンダントを見せてきた。それはガラス細工のトンボ玉というものだ。修学旅行先で体験作成をし、それに革紐を通してあった。
「綺麗なガラスだね、似合っているよ」
「お気に入りなの。そうだ、パパ知ってる?あのね、19歳の誕生日にシルバー?銀のアクセサリーをプレゼントされたら、女の子は幸せになるんだって」
白に水色のうずまき模様が入ったトンボ玉を照れ隠しの如く、指でクルクルさせながら娘は教えてくれたのだった。
「じゃあ、パパがプレゼントしてもいいかい?」
「ほんと?嬉しい!約束だよ!」
あの頃の娘はシルバーが高い物だと思っていたのだろう、おねだりすることも恥ずかしかったに違いない。
そのやり取りを思いだして男は慌てて検索してみた。『19歳 シルバー 幸せ』
『19歳、20歳、21歳への特別な贈り物
19歳のお誕生日には「シルバー」
20歳のお誕生日には「ゴールド」
21歳のお誕生日には「プラチナ」
を、贈るとその方に幸せになるという言い伝えがあるそうです。
特に19歳のお誕生日にシルバーアクセサリーを贈ると幸せな結婚が出来ると言われていて、大事な娘さんを持つパパさんは幸せが来てくれることを願って気持ちのこもった品を贈ってみてはいかがですか?・・・』
どうしてあの時、すぐに調べなかったのだろう。誕生日にトンボ玉のペンダントをつけてきた娘、母親が身につけていたかつて自分が贈ったハート型のペンダントを羨ましがっていたもっと幼かった頃の娘、そして今日「これが欲しい」とまっすぐに見つめていた娘を思いだし、胸が熱くなった。
数年前の手帳を机の引き出しから引っ張り出すと、娘の誕生日の欄に「19歳のプレゼントはシルバーのアクセサリー!」と書き記してあった。それなのに自分は、すっかり忘れていた。
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