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川沿いのレストランは二人で探したお洒落スポット。ぐるっと見回して、我ながらイケているロケーションだと満足。
「遅いじゃん、杏耶〜!」
会場のレストランの前には仕事帰りスーツ姿の巽陽介が立っていた。
その他、男性陣三名。
その内一人が、やたらスラッとしていて目を引いた。一人仕事上がりっぽくない格好。男性相手にこんなことを言うのもなんだけれど、随分と綺麗な人だった。
「ごめん、陽介! 先輩が仕事でとちっちゃって、残業発生しちゃってさ」
「――ちょっとなに、二宮さん、私のせいにするの? 酷い〜」
「え、いや、そいうわけじゃないんですけど」
背後から歩いてきていた先輩が気づけば至近距離にいて、聞かれてしまった模様。やんぬるかな。……でも、残業は明らかに先輩のせいですからね。
そして会社では作らない品を作っている先輩。え、なんで、両手を腰で組んで、少し前傾姿勢なんですか? そんな姿勢、会社で作ったことないですよね。あ、それにこの男は――ゴショゴショゴショ
『え? この人が妹さんの彼氏さんなの? なんだ、じゃあ、どうでもいいんじゃん』
ウンウン。あー、良かった、そこで肉食モードに入られたらどうしようかと思った。「彼女がいようと関係ないわ!」とか言い出さなくて本当に良かった。
振り返ると、問題なく他のメンバーもついてきていた。私の同期が一人と、先輩の友人(私の知らない他社の人)が一人。今日は四対四の合コンなのだ。
その人とは私も初対面だったけれど、なんだかとても綺麗な人。でも、ちょっとやたら色っぽい仕草がどこか違和感な感じで、波長が合うかちょっと不安な感じがした。でもまぁ、いっか。先輩もいるし、今日はそれぞれが楽しめれば良いんだから。
彼女は手慣れた感じで「こんにちわ〜」とか男性陣に話しかけている。一方で私の同期ちゃんは慣れない様子でモジモジ。すでに前哨戦は始まっている?
まぁ、全員集合しているし、もうすぐ予約の時間だし、入るかな?
上目遣いで視線を送ると、陽介は一つうなずいて、店内を指さした。私は頷き返す。
「じゃあ、時間なんで、全員揃っているし入りますねー!」
陽介がみんなにアナウンス。「は〜い!」と高校生みたいなみんなの返事。順にみんなが店に入っていく。
やっぱり、流石の腐れ縁。言葉がなくても伝わるものがあるよね。
そんなことに満足とも言い切れない混ぜ物の感情を抱いていると、隣まで来た同期ちゃんが耳元で囁いた。
「西宮さんは、あの彼と良い感じなんですか?」
「あー、あれはね、もう一人の『西宮さん』と良い感じなの」
「ん? どういうことです?」
「彼は妹の彼氏なのよ〜」
「へ〜、じゃあ、西宮さんとは何も無いんですか?」
「無いわよ。有ったら困るわよ。姉妹で血みどろの修羅場よ!」
「そうなんだ〜。おかしいなぁ、私のこう言う勘って当たるんだけどな〜。西宮さんと彼、良い感じだって」
「何言ってるのよ〜。さあ、入って入って。あなたも合コンで男性陣を物色するのよ〜。あ、陽介以外でね!」
私は最後の一人を店内に押し込むと、「いらっしゃいませ〜!」と威勢よく挨拶する店員さんに挨拶をして、自分が幹事なのだと伝えた。
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