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合コンはまぁ良くもなく悪くもなくといった感じで進んだ。
四対四で向き合って座った私たちは仕事の話とか趣味の話とか、昔の話とか、適度に話し相手を変えながら盛り上がったと思う。
先輩は初めから陽介のことをターゲットから外してくれたみたいで、残り二人のスーツ姿の男性と機嫌よく話していた。
入り口で陽介の隣に立っていた綺麗な男性のことが少し気にはなったけれど、彼はもう初めから先輩の友達に完全マークされていた。私が話しかける隙なんて微粒子レベルにも存在していなかった。
自己紹介で名前だけは聞いた。三城和真。デザイン関係の仕事をしているらしい。先輩の友達が想像以上に肉食系で、学生時代から恋愛音痴だった私としては、軽く引く。
結局、肉食系じゃないのは私と同期ちゃんだけで、陽介はそんな彼女が他の男性と話せるように気を使っている様子が見て取れた。私もそれに混じるものだから、結局、気付けば陽介とばかり話してしまっていた。
「ていうか、杏耶、おでこのそれニキビ?」
「ちょ、そうだけど、なんでわざわざ言うかな〜! 陽介マジで空気読めない!」
「そうですよ〜。巽さん、そういうことは親しき仲にも礼儀ありなんですから」
「あ〜、ゴメンゴメン。だって、杏耶にニキビとか、部活やっていた高校時代のことを思い出してさ」
「そっか、巽さんと西宮さんって、そんな昔からの付き合いなんですもんね」
「そうそう――」
女の子としてはニキビを指摘されるのはちょっと嫌だけれど、でも、やっぱり私はこういう友達同士みたいな会話が落ち着くし、楽しいのだ。
左右の先輩方をチラリと見ては「ああはなれない」と思ってしまう。
そうやって隣を見たときに三城さんと目があった。
ぺこりと頭を下げて「ども」というと、三城さんも可笑しそうに微笑んで「ども」と返してくれた。なんだかピュアな笑顔だなぁ。
「でさぁ、みきちゃん、聞いてる?」
「あ、はいはい、聞いてますよ。大変ですよねー、営業プレゼンは〜」
「そうなのよ〜」
でも肉食獣の魔の手に三城さんは、また一瞬で捕らえられてしまう。
なんだか少し話してみたいなって思ったけれど、肉食獣の前には止む無しである。
私は梅酒のソーダ割りをストローで啜った。
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