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巽陽介と出会ったのは高校一年生の時だった。ずっと男勝りで生きてきた私は、当時、恋愛なんて異世界ファンタジーの出来事だっていうくらい無関心だったし、恋愛音痴だった。
大学受験シーズンに突入して、陽介と離れ離れになる可能性を考え始めた時に、初めて陽介への思いが恋愛感情なんだって気づいた。あの時はぎこちなくなってしまって、しばらく陽介の顔も見れなかった。
気付いたからって恋愛音痴の私には、二人の関係をなだらかに「そういう関係」に持っていけるほどの恋愛スキルがあるわけでもなく、行き場のない思いを、煮え切らない態度のまま、先送りにしていたのが高校生最後の思い出だ。
幸いにも私と陽介は同じ大学に入学することになったから、私の拙い恋愛は大学時代へと持ち越された。でも、それからもこの想いを陽介に伝えることは出来なかった。何一つ変わらずに「一番仲の良い女友達」で「腐れ縁」の立場を謳歌していた大学二年生の春、事態は急転した。
妹の摩耶が陽介に恋をした。いつからそうだったのかは知らないけれど。私と違って可愛くて、女の子っぽくて、恋愛にも興味津々に生きてきた妹は、恋に落ちてから瞬く間に陽介に告白して、晴れて二人は付き合うことになったのだ。
私は自分の想いに蓋をするしかなかった。妹の恋も、陽介との友情も大切にしたいから。
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