父の悩み

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「私にプロポーズしてくれた時みたいにしちゃえば?」 「冗談だろう、あれはまずいよ」  ぴかぴかに装飾した、こちらでいうところのUFOに乗り込んで、彼女の実家の庭に颯爽と降り立ったことを思い出す。  それまで、私が決死の思いで宇宙人であることを告白しても、鼻で笑っていた彼女の、口をぽかんと開けた姿は今でも忘れられない。  それをするためにいくつもの申請を出し、プロポーズであるという情にも訴え、大変な手続きを取ったものだ。  ただし、今は時代が違うし、時期としてもまずい。  半年前に起きたUFOの不幸な墜落事故をきっかけに、宇宙人やUFOへの関心が高まっている。  テレビやネットでそれらに関するニュースを見ない日はないし、宇宙人の見分け方なるゴシップ記事も目にするようになった。  恐ろしいのは、それらの中に、あながち的外れとも言えないものが混じっていることだ。  地球人に対して、公に我々の存在を公表するには、地球の時間にして百年ほどは早いとされている。  故意に存在を露見させるような行為は、糾弾の対象にもなりかねない。  私がやったプロポーズは、あの時代だったからこそ実現できたものなのだ。
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