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「美沙子。なんなの?」
島谷美沙子は読書倶楽部の緊急会議の後、坂下千空に連絡して、明日の昼休みに渡したい物があると言って図書館に呼び出した。
千空とは幼稚園からの親友であるが、自分とは正反対でボーイッシュで可愛くて、運動神経抜群なスーパー少女である。
「まだ、怪我治ってないんでしょ?だから、千空に是非読んで欲しい本があるのよ」
美沙子は図書館の受付で、松葉杖をついて首を傾げている千空に微笑んでそう切り出した。
昼休みに千空が図書館に来るのは非常に珍しい事で、フィールドの違いにソワソワして戸惑っている。
「そうだなー。確かにこんな時じゃないと本なんて読まないか?」
「でしょー。ほら、これ」
「なんだよ。地図か?渡してくれりゃいいのに」
「本を探すのからスタートして欲しいの。それが図書館の醍醐味だからさ」
千空はため息をついて苦笑いしたが、親友の美沙子が「絶対に千空も感動するから読んでみて」と言われたのを思い出し、メモ用紙に書いた地図を受け取り、一人でその本を探しに行く。
「こんなことして意味ある……?」
受付の位置から矢印の方向に沿って静かな通路をコツコツと松葉杖をついて歩き、聳え立つ本棚の間を直進して何度か曲がる。
時折、本棚の番号を確認して、一番奥の壁側の棚の四段目の百科事典の端っこの方を探すと、分厚い書物の間に挟まれて、御目当ての単行本がポツンと置いてあった。
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