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「まったく美沙子のヤツ、こんな所に隠しやがって」
メモ用紙に書いてあるタイトル『空と風の色』を見比べ、本を手に取ってペラペラと捲り、軽く目を通してから受付へ戻る。
「見つけたよ。これだろ?」
「うん。それ読んだら、土曜日の読書会に参加してね。その本が千空への招待状みたいなもんだからさ」
「どうかなぁ?その頃は怪我も治って、バスケ部の練習に参加してるかも。美沙子には悪いけどさ」
「いえいえ。それ読んだら、こっちが大事だってわかるよ」
「いやに意味深な言い方するな」
「フッフッ……」
美沙子が本の貸し出し処理を済ませて千空に渡し、怪しい笑みを浮かべて挑戦的な視線を向けている。
髪を三つ編みにして眼鏡をしている美沙子は、親友がスポーツで人気者になり羨ましがっていたが、千空も美沙子に憧れていた。
自分には皆無の気品と女性らしい優しさがあり、理知的な猫みたいに周りを気にしないマイペースな美沙子が千空は大好きだった。
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