狙撃手は突然に

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「しかし、人となりを知ることは大切だと思う…」 「人となりや相性を確認するなら、尚更、“友達としての側面”より、“パートナーとしての側面”を見る方が建設的だと思いませんか?」 「なるほど」  明らかに流されて納得している彼の素直さが柔らかく私を撫でる。    私は、彼を大切にしたい。そんな傲慢を何の遠慮もなく自然に望めるのは、彼と感情の表出方法が似ていると思えるからかもしれない。私は、彼が私を大切にしてくれた時に、それを自然に受け取ることができるだろう。  これは、実は結構難しいことだ。クラスメイトとのすれ違いは未だに苦い思い出だ。  そして彼にとっても、きっと、私の“大切にする仕方”を、不愉快というコトなく受け止めてくれるのではなかろうか。少なくとも、不可解ということはなさそうだ。  それが、想いを交わす十分な因子であり、愛を感じる要素であり、私の高揚の原因だった。  求婚の理由など、それで十分だ。  突然生まれた気持ちを疑い悩んで彼と友達関係を築くに止め、彼の配偶者に劣後する未来を思えば、こんなに心を寄せることのできる相手が異性であったことは私にとって天啓だった。 「あなたが好きです。 いつか、結婚してください。 貴方が決意したら、いつでも結婚したいです」  彼の視線を捉え、私はもう一度、彼の心臓を狙撃した。 終
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