狙撃手は突然に

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 今も、私が動き始めるのを制して「いーから」と少し面倒そうに言う。だから私は、狭いベランダに人間が二人入っても邪魔かな、と思えてしまう。雑な私より数段手早く仕上げも綺麗な春希だから、干し方もこだわりがあるのかもしれない、と不安が大きくなる。  戸惑いながら、フライパンの隅に残っていたベーコンエッグと、スープが少なくなってやけに具が目立つあり合わせポトフを皿に盛りながら、トースターの電子音を待った。  その後の雑談で、春希が一日家にいると知った。昼食も夕食も段取りが済んでいるとのことで、私が春希と共にできることもなく、買い出しも特にないと言われてしまった。  私は、結局、家の中を一通り漂った末、流されるように愛車(バイク)に跨っていた。  どこに行こうと考えていたわけではない。家の前の路地を抜け、国道をひたすら北上する。
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