狙撃手は突然に

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 下道をそこそこのスピードで走りながら、たまにコンビニやお店に寄る。非日常圏で日常を楽しむ特別感が好きだった。  そういう私の好みに、この大型ネイキッドバイクはピッタリだ。  近所にある個人経営のバイク屋で、オヤジさんに推された中古バイクだった。大型車なのにスリムで軽く扱いやすいのもありがたいが、低中回転トルク型エンジンのトコトコ感が心地良く、バイクを転がしている的な感覚が楽しい。その割に加速も滑らかだった。勿論、高速回転型のパワー過剰な他車に比べると高速道路や坂道は意気込みが必要だけれど、それだって一緒に走っている感じがして好きだった。  街を通り抜け、山を越す毎に信号はどんどん少なくなっていく。家すら疎らになってくる。その、ほかに何もないただ道だけの敷かれた場を、一心に走っていくのが気持ち良い。  道幅は狭く、所によっては木が生い茂っていて頭上も圧迫感がある。その“籠った感”も、私好みだった。      *
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