狙撃手は突然に

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 夢中で走ってしまったようだ。気付くと真っ暗になっていた。最近お気に入りの山道コースに、無意識に入っていたらしい。  この辺りからだと、30分ほど走った先に、9時に閉まるコンビニがある。  木のトンネルを潜りながら、養豚場の横を抜けていく。  その後見知った住宅域に入った。  コンビニに駐車し、お茶を買う。一口含んで口内を潤し、準備を整え愛車に跨がった。  そのタイミングで、 「あっ、さっきのお兄さんだ!」 ヘルメット越しでも鼓膜に刺さる、高い元気な女の子の声が響く。 「さっき、急な上り坂のところで、うちの車を追い抜かしていったでしょう?」  幼いのに、喋る内容がそれなりに整っていて判りやすい、と、内心感心しながら女の子が乗っていたらしい小さな軽自動車をちらと確認する。確かに、そんなことがあった。
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