狙撃手は突然に

6/21
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「脇に停車したうちの車の横をすり抜けるときの、“ありがとう”の手のサインがめちゃカッコ良かった!」  言いながら、2本立てた指をおでこにつけ、スナップを効かせて指を頭から離し、ニヤリと笑って見せる女の子。  私の真似をしているらしい。が、誇張しすぎだ。恥ずかし過ぎて、悶えたいというより地団駄踏みたくなっていた私に、女の子はなおも喋り続ける。 「ここまでずっと、お父さんと、お兄さんの話をしてきたんだよ!」  ねーっ、と、一層高い声を上げて、女の子が後ろに振り返った。 「そうだね」 と、お父さんらしき男性が穏やかに応じる。そして、私へ視線を移し、軽く会釈した。 「娘が突然すいません」  女の子がしっかりしているせいか、お父さんの頼りなさ気なふにゃりとした雰囲気が強調されていた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!