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「いえ。そんなことありません」
一言だけ返して、ヘルメットを外す。
私があれこれ話しても、人見知りっぽいお父さんを困らせるだけなのが容易に想像ついたからだ。
途端に、
「ごめんなさいっ、お姉さんだったね!」
女の子が声を上げた。慌てる様子が可愛らしい。
短髪で化粧もせず、顔つきだって性別不明。曝したところで女と納得してもらえるなんて期待はしていなかった。ただ、女の子に対してメット越しの対話は失礼だと感じただけだ。
「私も、被ったままでごめん」
女の子に笑いかけると、女の子もニカッと笑った。
「バイク、カッコイイね!」
「ありがとう」
「あの挨拶は、いつもするの?」
女の子はまた指を2本立てて額につけ、それを格好良さげに離してポーズをとった。
先刻より更に大袈裟になっている。極めて心外だ。
「…お父さんが、親切にしてくれたからね。そういう人には、ちゃんと挨拶してるんだよ」
「義理堅いね!」
女の子のこましゃくれた言い回しがやはり可愛い。
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