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だが王立学院ではアリオカが授業を放棄したことなど、学院内の誰も気にかけたりはしなかった。
むしろ、入学して最初のの授業であのような騒ぎを起こしたことから、アリオカは学生からは侮蔑の対象となっていた。アリオカもその気質から周囲の学生を見下していたことから学院内に友人など一人もいなかった。
さらに、アリオカは他のベーヌ出身者と交わることもよしとせず、カザハヤの下宿には入らずに、個人でヴィレドコーリでの住居を決めていた。そのことも彼の孤立を深めていった。
追い払うのも面倒くさいので好きにさせているだけで、タカアキも彼が自分の友人であるとは思ったこともない。アリオカもタカアキがアリオカ以外の人間と一緒にいる時には、タカアキの傍に寄ってこようはしなかった。
また、タカアキとテレーズが話しているのを見かけた時などは、遠目にも解るほどの憎々しげな表情でテレーズを睨みつけていたが、テレーズはアリオカのそんな視線など全く気にもかけていなかったので、むしろ滑稽ですらあった。
アリオカにとって、「男のくせに女のような長い髪をした軽薄な格好をしている上に、自分に逆らう下級生」であるテレーズが、王立学院において成績優秀者として扱われることは、ありえないことだったらしい。
何かあくどい方法を持ってその地位を手にしているに違いないと確信しているようだった。
テレーズの家がヴィレドコーリでも有数の資産家であることから、テレーズの成績は金で買ったものであると勝手に断定し、それを辺り構わず吹聴していたが、当然相手にする人間はいなかった。
タカアキもアリオカのその言説を何度も聞かされていたが、適当に聞き流していた。
一応テレーズ本人の耳に伝えたことがある。だが、テレーズの反応は軽く肩をすくめただけだった。彼にとっては、そんな虚言の相手をするのも馬鹿馬鹿しかったのだろう。
その他にもアリオカは己の妄想だけでテレーズを貶めるようなことを言い続けていた。あまりにも目に余るので、学院職員から注意を受けたこともあるが、アリオカは決してそれを止めようとはしなかった。
そこに今年、ベーヌからセーハイネの翠玉、チグサ・ハツキが王立学院大学に進学してきた。
それだけでなくチグサが大学での友人として選んだのが、アリオカの忌むべきメールソー・テレーズだった。
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