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「そんなことはない……いや、そうじゃなくて、ルクウンジュの翠玉のことだ」 「ハツキの? まだ何かあるのか?」  クニヒロは食事の手を止めて首を傾げた。  その彼に頷く。 「ああ。一目見た印象だけなのだが……私はやはり彼は翠玉なのだと思った」 「ん? ああ、その通りだけど」 「そうではなくて……」同じ呼び名であることが尚更相手にこちらの意図を伝えにくくしていると、もどかしくなる。 「おまえはルクウンジュの翠玉はあくまで『人』であると再三言っているが、私から見た彼は、正しく私の思う『翠玉』だと思ったのだ。彼の醸し出す空気は、余人とは違い過ぎる」 「ああ……」  タカアキから指摘に、クニヒロは困ったように首を横にして荒っぽく頭を掻いた。 「そうなんだよなあ……。おまえの言う通りなんだよ。あいつ、一人で外にいるとどうしてもああなっちまう。ユキさんも気にしているんだけどな。やっぱり彼と引き合わせるのが先決だろうなぁ」 「彼?」  尋ねたタカアキに、クニヒロは肩をすくめて笑った。 「今年の新入生には、あのハツキでも興味を持ちそうな、あいつ並に目立つ奴がもう一人いるだろう?」  クニヒロが言う人間に思い当たりがあり、タカアキは頷いて返した。彼の言う通り、それはこの食堂で人目を集めるチグサ・ハツキ同様、そこにいるだけで万人が注目する人物だった。 「さっき言った『もうひとつ』ってのがそいつのことだよ。ユキさんたちがハツキをこの学校に進学させたのも、彼に引き合わせるのが一番の目的だ」 「それはまた、随分と大がかりな話ではないか。彼が人目を惹く人物であるのは確かだけれど、どうしてカザハヤは彼を翠玉の相手に決めたんだ? 何か他に理由でもあるのではないのか」 「さすが、察しがいいな」  タカアキに感心したように笑うと、クニヒロは顔を寄せろと手招きをしてきた。  指図された通りテーブル越しに顔を近づけたタカアキの耳許にクニヒロが口が寄せる。  小声で知らされた事実に、タカアキは目を剥いた。 「あいつはな、おまえの国の翠玉様に会ったことがあるんだ」
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