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「そしたら先生にも、俺がその人と友人になるのは歓迎とおっしゃっていただけました。でも……」
笑みを少し苦いものにして、テレーズは頭を掻いた。
「続けて先生は、彼と知り合う機会は自分で作れとおっしゃったんです。友人の話では彼は誰の相手もしないということでしたが、先生は、俺に対してだったらその人も興味をもってくれるだろうともおっしゃって下さいました。まあ、見た目だけでしたら俺は人並み以上に目立ちますからね。ただ俺はもう一年の授業の単位は取ってしまっているので、彼と同じ授業は受けることが出来ませんし、教養学部と理工学部の敷地も離れています。ですのでデュトワ先生にお断りを入れて、こうやって放課後に彼を探しているんです」
ここまで説明を聞くと、タカアキもクニヒロも色々な意味で笑うしかなかった。
テレーズがクニヒロやカザハヤの思惑通りに彼を見つけてくれたことはもちろん、それ以上のテレーズの規格外れっぷりにだ。
資産家の末っ子らしく、多少直情的ではあっても裏表のない素直さを持った性格や、彼自身の持つ非凡な才能、また敬意を持つべき相手にはきちんとした対応をする態度に、彼を可愛がる教授陣は多い。
しかしだからといって、厳しいことでも有名なあのグィノー教授相手に。
「研究室に好みの美人がいるから紹介して下さいなんて、教授に言うか?」
声を上げて笑ったのはクニヒロだった。
クニヒロもタカアキも、テレーズが探す相手が誰であるか予想はついている。けれどこちらからその名前を出す訳にはいかない。
タカアキは笑いながら、テレーズに質問した。
「そこまで君の気を引くだなんて、今年の一年生にはどれほどの美人がいたんだ? 私も見てみたいね」
タカアキの質問に合わせて、クニヒロもうんうんと頷く。
「そんな見事な見た目をしているくせに、おまえの浮いた話なんて噂にすら聞いたことなかったもんな。そんなおまえを射止めるとはよっぽどだろう。一体おまえさん好みの美人ってどんななんだ?」
「いえ……」
先輩二人から質問を受けて、珍しいことにテレーズは頬を赤くして口許を手で覆った。
それでもすぐに手を離し、頬を赤らめたままにこやかに笑う。
「ベーヌ出身の、生粋のヤウデン系の人です。もしかしたらクニヒロさんはご存知かもしれません」
「俺が知っているような人間か?」
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