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解っているだろうに、テレーズからの問いにいかにも興味深そうな表情をして白々しく訊き返す。
あのカザハヤ・サネユキからも頼りにされているだけあって、クニヒロもなかなかの役者だ。
テレーズは嬉しそうな笑顔のまま頷いた。
「ええ。元老の大カザハヤ氏の孫でチグサ・ハツキというのですが」
想像通りの回答に、クニヒロはまたも白々しく「ああ」と返し、そしてテレーズに笑いかけた。
「チグサだったら、おまえがそこまで言うのも納得だ。学年は違うけれど、小中高と同じ学校だったので知っているよ。確かにあの子は人並み外れた美人だ」
「でしょう? それに緑の瞳だと友人から聞きました。残念ながら、遠目で一目見たきりですので、俺自身では彼の瞳の色までは確認出来ていないのですが……。でも彼と間近で会ってみたい。その瞳を見てみたいし、彼の声を聞いてみたい」
タカアキが思わず苦笑をしてしまったのは、あまりに彼が赤裸々な気持ちを吐露したからだ。
そしてもう一つ気づいたことがあったからだった。
苦笑してしまった自分とは違い、チグサに対する思いを熱っぽく語ったテレーズにクニヒロは優しい笑みを浮かべていた。
穏やかな口調でテレーズに問う。
「テレーズ。それじゃあまるで、チグサに一目惚れでもしてしまったようじゃないか」
クニヒロに指摘をされ、テレーズは目を大きくした。そしてすぐに、照れくさそうに笑いながら頭を掻いた。
「そうですか? こういうこと、初めての経験なのでよく解らないのですが……。でも、おっしゃる通り、これが一目惚れってやつなのかもしれませんね。じゃあ俺、彼を探しに行きます。お二人も、もしどこかで彼を見かけたのなら、是非教えて下さい」
失礼しますと二人に対して会釈をすると、テレーズは長い金髪をたなびかせ、理工学部実験棟の方へ走っていった。
元気なもんだとその背中を見送る。
彼の姿が建物の陰に消えた後、タカアキは隣のクニヒロを肘で突いた。
テレーズが挨拶をして駆けだしてすぐから、彼は片手で額を押さえ俯き、笑いを堪えていたのだ。クニヒロはタカアキに突かれると顔上げ、今度は声を上げて笑い出した。
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