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ふわふわとした明るい茶髪に、童顔で小柄なトモヤスがそうしている姿は、小型犬が尻尾を振っている様子を思い起こさせる。
なんとも素直で微笑ましい後輩が来たものだと感心しながら、タカアキはクニヒロへ目を向けた。
彼らの会話を聞いていて不思議に思ったことがあったのだ。
「クニヒロ、いいか?」
トモヤスとの会話の間に入ってきたタカアキに、クニヒロは怪訝そうに首を傾げた。
「どうした?」
「いや……。おまえ達の言う『ハツキ様』というのは、ルクウンジュの翠玉なんだよな?」
「ああ」
タカアキの質問にクニヒロはあっさりと頷いた。
クニヒロの前に座るトモヤスもタカアキに顔を向け、この人は何を言っているのだろうとも言いたげな表情で頷く。
ベーヌ出身のトモヤスにとっては、それは当たり前のことなのかもしれない。けれどヤウデン人であるタカアキにとって、この国の翠玉とは、現在のところ人から伝え聞いている情報に過ぎなかった。
「何か気になることでも?」
不思議そうに尋ねてきたクニヒロに、タカアキは彼らの会話から受けた印象をそのまま質問にした。
「ああ。『翠玉』だというにしては、おまえのハツキ様とやらに対する口調があまりにぞんざいに感じた。トモヤスもそれに疑問を持ってないようだが……どうしてだ? ルクウンジュでは『翠玉』も神殿に住まうのではなく一般人と同様の生活をしているとは聞いてはいたが、それでも『翠玉』なのだろう? そのハツキ様とやらも現人神ではないのか?」
ヤウデン人のタカアキの問いに、クニヒロはああ、と考える様子を見せた。
回答が早かったのはトモヤスだった。
「クニヒロさんのシガ家は、ハツキ様のチグサ家とは親戚関係なんです。チグサ家はカザハヤ家とも縁続きなので、シガはカザハヤとも近しいんです」
「『翠玉』と親戚? それにカザハヤとも縁続きだって? 初耳だな」
片眉を上げたタカアキに、クニヒロは肩をすくめた。
「祖父の代にチグサから分家してシガになったんだ。わざわざ人に言うようなことじゃないだろう? チグサやカザハヤと縁続きだからといって、俺の立場にそんなに関係がある訳でもないし」
チグサはともかく、カザハヤと縁続きであることが、ベーヌの人間であるクニヒロに何の影響も与えていないはずはないだろう。しかしそれを関係ないと言い切ることが出来るのもクニヒロらしいと思った。
だからこそ、この国に留学してきた当初からずっと彼と気の置けない友人でいられるのだ。
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