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おとなしく説明を聞くタカヒロに、クニヒロは片手を頭にやりながら続けた。
「ヤウデン人のおまえからしたら、確かに『翠玉』とは現人神なんだろう。でもここじゃ、翠玉っていっても一人の人間でしかない。まあ、ハツキにしても、あいつが生まれる前には翠玉と同等に扱われていたサネユキさんにしても、浮世離れした美人さんなんで、翠玉っていう以上に特別に扱われているところはあるのだけどな」
「そうです! お二人ともベーヌではファンクラブがあるんです!」
カザハヤ・サネユキには、カザハヤ家主催で年に数度行われるヤウデン留学生の懇親会で会ったことがある。
クニヒロが言う通り、浮世離れした美しさを持つ人物だった。
純血のヤウデン系にしては僅かに緑がかった薄い瞳の色が印象的だったのを記憶している。
ただ、クニヒロを補足しようとしたのだろうトモヤスの言葉は、あまりに俗っぽすぎないだろうか。
率直にはそう感じたが、そんな感想は黙っておく。
タカアキが思ったことを察したかは解らない。クニヒロは苦笑してタカアキを見上げてきた。
「ユキさんはハツキをとても大切に思っていらっしゃる。あの人がそう思っているハツキは、俺にとっても年下の親戚ってだけじゃない。可愛い弟みたいなもんなんだ」
「……その感覚が、よく解らん」
「ユキさんはハツキと兄弟同然にして育ってこられた。俺にとっても二人ともがそうだ。この関係をおまえに理解してもらおうとは思わないさ。でもここはヤウデンではなくルクウンジュなんだ。『翠玉』と呼称するとはいえ、ヤウデンとは違うさ。そもそもルクウンジュの国教はユーウィス教で、天之神道ではない。同じ呼び方でも、おまえの思う翠玉と俺達の翠玉は違うものだよ」
クニヒロの言うことが理解出来ないわけではない。しかし自分がヤウデン人として持つ感覚では、どうしても釈然としないものがあり、タカアキは眉根を寄せて黙ってしまった。
そんなタカアキに苦笑すると、クニヒロは再度トモヤスに向き直り、改めて今後の学校生活において、チグサにどう接するのかについて注意をしていったのだった。
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