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「僕も高橋っていいます」
「え?」
「高橋 隼です。今日は一日よろしくお願いします」
涼しげな笑顔に面食らう。
「あ、はい」
真っ直ぐな瞳を直視することが出来ず、適当に挨拶を済ませると、急に落ち着かなくなりキョロキョロ部屋を見渡した。
「えっと、とりあえずここのデスクに座って下さい。とくに今日はすることはないので、この辺の資料を読むとか、まぁ適当に過ごして下さい」
私には締め切りが迫っていた。何で外回りに連れて行ってくれなかったのか。新人君の顔をチラッと見ては、同僚を恨む気持ちを押さえた。
「高橋さんの名前って茜ですか? 高橋茜さん?」
「はい!」
自分のフルネームが聞こえたので、無意識に返事をしてしまった。
その声は意外にも大きく、部屋に響き渡った。
「タウン情報誌のコラム読んでます。僕が好きな作家さんの文章の雰囲気に近い印象を受けて、名前をチェックしたら、僕と同じ名字だったんで。内定が決まった時からいつか会えると楽しみにしていました。今日は会えて嬉しいです」
私は赤面しているのが分かった。自分の馬鹿でかい返事と重なり、面と向かって告白されたようで恥ずかしかった。『一読者』に過ぎないのに。
舞い上がるのには彼がイケメンであることも大きかった。
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