7人が本棚に入れています
本棚に追加
思春期は写真が嫌いだった。
周りが色気づくと自分の地味さが際だった。
切れ長の目は攻撃的な印象を与え、集合写真では目は半開きだった。
常に本を抱えていたことから根暗なイメージが定着すると、大学は自ら暗い子に徹することにした。
だて眼鏡デビューは今に至る。
「美容コンテスト用に写真を撮らせて下さい」
撮影ではメガネを外す代わりにマスクを着用した。
高橋隼にカメラを向けられても嫌な気はしなかった。
彼は慣れた手つきでヘアメイクまで終わらせると、無言でシャッターを切った。
「この写真、個人で使わせてもらってもいいですか?」
私の突然の申し出に、一瞬静まり返った。
「SNSのアイコンに使用させて下さい」
初めて告白した。
「自分の顔を好きになるきっかけに」
私はSNSをしていることを公にしていない。
高橋隼は微笑むとマスカラを差し出した。
「僕も今の自分を受け入れるきっかけにします」
最初のコメントを投稿しよう!