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ドラゴン殺し系女子の小さな一歩
「これでもくらえっ! ファイナルスラッシュ!」
女剣士が力強く大剣を振るった。シルバーに光る防具を身につけながらも鮮やかな身のこなしで、腰に巻いた赤い布が大きく翻る。
激しく光る魔剣。そこから放たれた光の刃がヘビに似たモンスターに襲いかかった。二頭を持つ巨大なヘビの腹に光が食い込み、瞬間、その体全体にひび割れ模様が走った。ひびから漏れ出るまばゆい光。
パンッ!
クラッカーが複数個鳴ったような音と共に、モンスターは光の粒となって四散した。
女剣士、ミアは、大剣を地について深呼吸をした。ヘビがいなくなった見晴らしのいい草原を黒い瞳で見つめる。太陽が降り注ぐ空っぽな空間のどこからか、爽やかな風が吹いてきて、ミアのセミロングの髪を揺らした。
ミアは振り向いて、ニッと不敵な笑顔を作った。
「S級モンスター撃破。どうよヴィン?」
「お見事」
そう言いながら近寄ってきたのは、黒髪の青年ヴィン。仲間と呼ぶのはミアにはしっくり来ないが、よく一緒にモンスター退治をする知り合いだった。
ヴィンは手に持っていた弓――魔力が具現化した光の弓を消し去ると、パチパチと小さく拍手をした。
「さすが『ドラゴン殺しのミア』、おっかないね。それとも『女帝剣士』だったっけ?」
「言ってなさいよ」
ヴィンの素朴な顔を睨んでやる。少しして、2人はプスッと吹き出した。ミアがモンスターとの戦いを重ねる内に、どこからか生じた不本意な二つ名が次々と広まってしまい、正直辟易していた。その点、ヴィンは変に特別扱いしてこないからやりやすい。
女扱いも全くされていない気がするが。
視界の下の方で何かが動く。ミアが見ると、丸い体のウサギのような生き物がヴィンの足に擦り寄っていた。
「フフ。ダッチも帰りたいみたいだし、そろそろ街に戻ろうか」
ヴィンが手のひらを地面に向けた。2人と1匹の足元に魔法陣が出現する。
転移。
からの、ヴィン達と別れた後に一人で超転移――。
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