74話 あの時の真実

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74話 あの時の真実

「死んでない……だと?」 「そう、死んでない」  嘘だ……体力を見た時に俺は0と見たはず。あいつは少し希望を持たせてから落とすつもりだろ。どうせそうなんだ…… 「嘘をつくな」  男は笑みを浮かべて言う。 「だから、本当なんだって。あの時、僕はみんなを別空間に転移させた。暗闇の中にみんなを連れて行ったよ。0になる瞬間に君が急に転移して少しビックリしたけど……全員回復してあげたんだ。ま、死んだのは事実かもしれないけど、今も生きている。一回死んでいきかえっているって感じかな」  真剣な顔で言ってくる。顔を見ても嘘には見えない。 「回復してあげた後、50層に向かって転移して今は牢屋だ。実際に見せてあげよう」  水晶玉を魔法陣から出す。そこに映っていたのは石の壁、地面、ベット。椅子や机は木でできていて、ベットに横になっていたのはレナ。椅子に座ってパンを食べているユリの姿とショウの姿。 「レナ……ユリ……ショウ……!!でもあいつらならあそこから逃げれるはずだろ!?」 「無理だね。あの壁や地面などは管理者権限があるんだ。僕が管理者、何の魔法や何かをしても絶対に壊れない」  管理者権限……俺の能力もそのはず……でもどうして……なんであいつが持っているんだ? 「管理者権限は俺もあるはず……どうしてお前は持っている」  少し困った表情になったがまた言い始める。 「えーっとね……『コピー』だね。僕の能力はあんまり教えたくなかったんだけど……コピーって言うのは他のものと同じになれる、簡単に言ったら。僕の顔や体は男、けどなろうと思えば女や他の虫やモンスターにだってなれたりするんだ」  なかなか厄介な能力だな……早く殺したい気持ちがあるがレナたちを救う方法がつかめるかもしれない。でもそれと管理者権限に何の関係が……とりあえずもう少しだけ話を聞いてやるか…… 「そもそもお前は一体何者なんだ?」  また笑みを浮かべる。 「お?気になる?僕は『テンセイシャ』。君を転生させた者」 「お、俺を……転生させた……だと?」  待て、テンセイシャは7人。2人、ゼロとレイはここにいて他の5人は行方不明。あの男をゼロとレイは知らない……そんなこと、あるのか……?  男への殺意より驚きのほうが強くなり、口をアングリと開けたまま男のほうを見る。 「あれ?分からなかったかな?この世界にはテンセイシャが7人いるって言われているけど真っ赤の嘘で、本当は3人。魔王が7人いるからこんがらがってるんだよね、この世界は」 「3……人……俺は含めなくても、ここにいるゼロ、レイ、そしてあの男だけだって言うのか!?」 「そうなるね。ごめん、4人か……」  ごめんと言いながら手を合わせた。  こいつ、頭おかしいのか?軽々と間違えて軽々と謝りやがって…… 「それは一旦置いておいて……何の用だ?」  あ、忘れてた、みたいな感じで目を丸くさせる。 「ごめんごめん……それ言わなきゃ来た意味がなくなっちゃうから……全員を離れ離れにさせてあげる。あ!あのマイ?って言う人たちも同じようにね」 「お前……何を……」 「私たちまで何をするつもりよ」 「姉さん、こいつ殺したほうが……」  ゼロやレイもこの状況が想定外だったのか、あの男に襲い掛かった。しかし弾き飛ばされ倒れていく。男は笑みを浮かべながら言う。 「じゃあね。次は40層で会おう。レナたちもそこにいるかもね~」  魔法陣をいつの間にか出していた男は魔法陣で出していたワープホールで逃げて行った。ゼロとレナが立ち上がる。そのとき、俺の視界が真っ白になっていくことに気づいた。 「な、なんだ!?視界が真っ白だ!!」 「私もだわ!」 「姉さん、どうしましょう……」 「なんや!?あの男も全く分からんし……」  今起きている状況に困惑していると意識がもうろうとしてきて、全員バタッと倒れてしまった。  ――――起きて……アキ―――― 「は!!な、なんだ……今の声……」  頭の中で響いた声。その声のおかげで俺は目を覚ます。きれいな草原。鳥が鳴いていて草は綺麗に緑色。 「ど……どこだ?そうだ……ミユ、ここは……」 「ここは20層だそうです……もともと連れて来られた場所が20層の城だったらしいですね……」  そうだったのか……あの男……まだよくわかっていないけれど……あいつを殺さなきゃいけないようだな。 「マジック、ワープ」  どこからか、男の声がする。魔法陣が目の前に描かれていき、そこから扉が出てきて、扉が開かれた。出てきた人はヨク。 「来れました……はぁ……」  息を切らしながらこちらを見てくる。 「ど、どうした?そんなに息を切らして……」 「待ってください。マジック、ワープ」  アキの言葉を無視し、魔法陣をたくさん描き、扉を出していく。そこから出てきたのはマイやライ、ナナだった。他は失敗。 「げ、限界……」  ヨクは目を閉じながら倒れて行った。他のみんなも倒れていき、俺だけが立っている状態に。ヨクのところでしゃがみ込む。 「よく頑張ったな。たぶん、あの男も予想外だろうな……やるか……全員助けてこの世界を救う。俺は……」  ――――英雄になるんだ。母さんに言った言葉を現実にする――――
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