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「最近、嫌いになった?」
付けっぱなしにしていたテレビ番組で好きな女優が登場してきたため、右手に掴んだスプーンを口元に持っていくのを忘れていたとき、彼女に言われた。
「え?」
「シチュー。前はもっと美味しそうに食べてたよね?」
手元のスプーンを見つめる。ほとんど溶けてしまったじゃがいもがかすかに覗く、白く濁った液体を俺はそのまま口に運んだ。
「いや、別に嫌いでは…」
テレビの中の女優は楽しそうに笑っているが、俺の向かいに座る彼女は口角一つ上げずに同じシチューを食べている。スプーンが食器に当たる金属音が交互に響き渡り、少しリズムに乗りたくなった。なんて我ながらバカなことを考えていたら罰が当たった。
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