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私と同じ顔の少年が、私の隣で片膝を着く。
同じ顔。同じ声。同じ読みの名前。
違うのは、性別と名前の字面だけ。
私は、一卵性双生児の弟の顔を見て、ボロボロと大粒の涙を零した。
「天音、無事で良かった。
補給拠点がバレていたんだ。前方は壊滅。中央も半壊。予定していたルートは使えない」
雨音が、深い息を吐く。
軍服の胸ポケットからヨレヨレの地図を取り出し、地面に置いた。
「天音。聞いて。
ココにくるまで、敵の動きを見てきたけれども。奴らは奇襲が成功した事で、まっすぐ前進している。つまり、C地点まで後退しても、いずれ追いつかれてしまう。
だから、この森を迂回するしかないんだ。視界も足場も最悪だけど、それは敵も同じ。朝日が昇るまで、残り二時間。今から行けば、ギリギリB地点に辿り着ける」
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