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4・夜に駆ける
ふっと、夜中に目が覚めた。
私はチューブだらけの上体を起こし、窓の外を見る。
真上にある月が、庭園の花一つ一つに、柔らかな光を灯している。
流星のカケラが、青い水面で光っている。
「天音お嬢様。眠れないのですか?」
ノックよりも早く。
薄く開いた扉前に立つメイド。
私は胸元のネックレスを揺らしながら、微笑んだ。
「月が綺麗な夜だもの。夜更かしをしても、許して欲しいわ」
嘆息したメイドが室内に入り、レースのカーテンを開ける。
真昼のように明るい月が、ネックレスを照らす。
心優しい老男爵に救われた私、天音と。
私を生かしてくれた雨音、二人分のネームタグ。
星の瞬く音さえ聞こえそうな、静寂の中。
私は、ゆっくりとベッドに身を横たえる。
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