きれいの盾

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「俺はお前のような、人を貶すしか能のない使えない新卒二年目じゃないから」  小出くんの目が見開かれて、ひゅっと息を吸う音がした。そのまま勢いよく背を向けると、踵を大きく鳴らしながら、フロアを出て行ってしまった。 「ったく、なんか一言くらい言えねぇのかよ」  興醒めしたように、吉川くんがつぶやく。わたしは張り詰めていた緊張の糸がぷつんと切れてしまい、呆けた顔でこくりとうなずいた。  吉川くんは茫然とするわたしをしばらく見たあと、 「でもまぁ、ギャグセンスない、はキレるよなぁ」  くつくつと笑いながら、肩を震わせた。いつから聞かれていたのだろうか。みっともない姿を見せてしまって、恥ずかしさが襲う。 「でも……全然おもしろくないんだもん」  なにか言い訳をしようかと思ったけれど、なにも思い浮かばず、結局さっきの発言を繰り返した。 「確かにな」  もう一度笑って、吉川くんはまっすぐわたしを見た。 「さっきの澤原、堂々としてて、すげぇかっこよかった」  意図しない方向からボールを放り投げられて、目を瞠る。 「あ……りがとう……」
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