きれいの盾

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 ***  お会計をするときに、この一ヶ月が勝負だから頑張ろうねと発破をかけられた。わたしは帰り道にドラッグストアへ寄り、麻衣さんにお勧めされた敏感肌用のコスメをすべて買い揃えた。お会計を待っている間、パステルピンクのグラデーションが施された爪を見ていると勇気が湧いてきた。  その日の夜から、買ってきた洗顔料、化粧水、乳液を使いはじめた。家にいるときはポニーテールにして、前髪はヘアバンドで留めた。夕食をとりながら、枕カバーを毎日取り換えたいとお母さんへ伝えたら、驚いた顔をしたあと、洗濯するわね、と笑顔で了解してくれた。  休みの日にはメイクの練習をした。『化けるのではなく、整える意識で』と、麻衣さんはメイクのコツを教えてくれた。それくらいなら身の丈に合っていて、気持ちも楽だった。  一ヶ月間、どんなに疲れていても、スキンケアとメイクを怠らずに会社へ行った。顎のニキビは残っていたからマスクは着けていたけれど、二週間を過ぎたころから、だんだん落ち着いてきた。仕事は上期の終盤で忙しさのピークだったのに、肌の調子は良かった。 「もしかして、毎日のお手入れのおかげなのかも……」
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