きれいの盾

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 小出くんはそっか、と小さく頷いて、わたしを上から下まで値踏みするように見た。不快感が襲って、反射的に「なに?」と訊いていた。 「いやぁ……案外澤原さんって可愛いんだなぁって。俺の周りでもマスクを外した澤原さんって評価高いんだよ?」  あまりにも失礼な言動に、耳を疑った。知らないところであなたの容姿を査定していますと言われて、背中が冷たくなっていく。  言葉を失うわたしと対照に、小出くんは得意げに話を続ける。 「ほんとはもっとはやく話しかけたかったんだけど、今週澤原さんのチーム、ずっと忙しそうだったじゃん? 吉川はずっと席にいるしさぁ」  不満げにぼやく小出くんに、わたしの眉が自然と中央に寄る。 「吉川って得してるよなぁ。日本離れて優雅に海外出張なんて。俺も女性が上司だったら、ワンチャンあったかもなぁ」  耳元で囁かれたように大きく響いて、鼓動が速くなる。 「それは……吉川くんがイケメンだから、西山さんの贔屓で選ばれたってこと?」 「だってそうでしょ。新卒二年目の海外同行なんて、ただのお荷物じゃん」
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