きれいの盾

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 いけしゃあしゃあと言い放つ小出くんに、わたしは唖然とした。社内でも最速でチームリーダーに昇進した西山さんが、そんなくだらない理由で吉川くんを選ぶわけがない。そもそも、吉川くんは彼の努力で新人以上の力を身につけただけだ。吉川くんをちゃんと見ている人なら、顔のおかげだなんて絶対に言わない。  吉川くんだけでなく、チーム全体を腐されたようで我慢できなかった。わたしは知った口で好き勝手に話す小出くんを睨みつけた。 「なに?」  わたしの不穏な空気を察したのか、小出くんの顔がしかめられる。好戦的に見つめ返されて、わたしの心臓がいやな具合に縮まった。同時に不安が背中にへばりつく。ここで喧嘩をしたら、来週から噂の的になってしまうかもしれない。今わたしがごめんと言えばそれで丸く収まる。わざわざ歯向かう必要なんてないのではないか。  考えるごとに、唇の感覚が消えていく。不安が頂点に達して、おもわず口元に指を這わしていた。べっとりした感触に我に返る。  指先が触れたのは乾いた不織布じゃなくて、グロスのついた唇だった。
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