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「へぇ。小出くんってギャグセンスないんだね。全然おもしろくないよ?」
まっすぐ見据えると、小出くんの顔がかっと赤くなった。
「おまっ、ちょっとチヤホヤされて調子に乗ってんじゃねぇ──」
小出くんの語気が荒くなって、わたしはぐっと唇を噛んだ。後悔はしていない。負けるものか。
「小出。そこ俺の席」
芯から冷える声に、一瞬でその場が凍りついた。不機嫌を隠すことなく吉川くんが小出くんを見下ろしている。
「あ……」
小出くんは、しまったという顔をして、慌てて椅子から立つ。吉川くんは奪うようにして自分の方へ椅子を寄せると、めんどくさそうに座った。
「なぁ」
吉川くんが小出くんを見る。まっすぐと、何にも恐れていない顔だった。
「図星突かれて、キレるのって恥ずかしくないの?」
小出くんの顔が一瞬で、茹で上がった。唇を震わせて、絡めた手の指先をしきりに動かしている。小出くんの熱が上がるほど、吉川くんの顔は冷酷なものへ変わっていく。こんなに怖い吉川くんを見たことなくて、わたしは黙ったまま瞬きを繰り返した。
それから、と吉川くんが続けた。
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