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吉川くんから向けられる視線が熱くて、語尾がしぼむ。唐突になにを語ってしまったのだろうか。いたたまれなくなって、目をかたくつぶる。
しばらく沈黙のあと、椅子がきしむ音が鳴った。
「だからか」
粒の整った低い声が、耳に響く。
「最近、本当にきれいになったもんな」
吉川くんの言葉に弾かれて、おもわず顔をあげる。穏やかな瞳がわたしを捕らえて、目尻がわずかに細められた。途端にわたしの身体の中央がきゅうと小さくしぼむ。心臓が暴れて、痛くて苦しい。けれども一ミリも動けなかった。瞬きも、呼吸も、何もできなかった。
「よかったら来週、ふたりで飯行かない?」
わたしを見つめながら、吉川くんが静かに訊く。もっときれいになりたい。大きな衝動が、わたしのなかに芽吹いた。
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