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お弁当の中身はまだ半分ほど残っている。食事マナーを取るか、ニキビ顔のすっぴんをさらすか。わたしは悩んだ末に、品性を捨てることにした。
吉川くんと一緒に戻ってきた小野くんが、驚いたようにわたしを見る。
「めずらしいね。澤原ちゃんがマスク付けっぱで食事するなんて」
「ちょっと今、ニキビがひどくって」
わたしは目を逸らして、はぐらかすように笑った。小野くんと一緒に、吉川くんの目線も感じる。
「ごめんね……見苦しくって」
急いでマスクを引き上げて、視線をさまよわせながら謝る。吉川くんはわたしをじっと見たまま、眉をひそめた。
不細工でごめんなさい。わたしはふたりから目を背けながら、心の中で何度も謝る。吉川くんのパーツの整った涼しげな顔に見つめられると、どうしようもなく謝りたくなる。
イケメンだと言われ慣れて、迷惑そうな態度すら取る吉川くんと、かたや見苦しい顔と思われたくなくて、とにかく顔を隠すわたし。こんなわたしが吉川くんを好きだなんて我ながら滑稽だと思う。
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