きれいの盾

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「わたしと……同じ」  茫然とするわたしに、『きれい』を装備した麻衣さんが自信たっぷりに頷く。 「コンプレックスは、自分を変える最強のバネよ」  そう締めくくって、目尻を細めて笑った。  どくんどくんと心臓の音が鼓膜いっぱいに響いた。身体の奥底から、エネルギーに満ち溢れた衝動が湧いて、喉元へ駆け上がってくる。 「わたしも、武器が欲しいです」  自分を変えたい。強く思った。  よっしゃ、と麻衣さんが弾んだ声を上げる。 「大丈夫。種は先輩がちゃんと蒔いてあげるから。あとは玲花ちゃん次第よ?」  わたしの『きれい』の芽を、ちゃんと育てられるだろうか。不安を浮かべると、 「玲花ちゃんが『きれい』を目指すことが大切なんだから」  気楽に行こうよと、麻衣さんはからっと明るく笑った。  手元を見れば、さっきまで付いていた透明のジェルネイルはきれいに爪から剥がれていた。麻衣さんは席を立つと、パーテーションの向こう側からあったかいおしぼりを持ってきて、わたしの両手を包んだ。 「手始めに、真っ赤なネイルでもしてみる?」
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