星の送り人

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 銀湾が、藍より少し深い色をした夜空に広がっていた。森深い辺境の地にあるその村からは一つひとつの光の輪郭がはっきりと見える。ふと、澄んだ夜風が南東から吹き抜けてきて、草木の香りを匂い立たせた。少女が纏った麻布の衣と左右に結った三つ編みが、それに倣って軽やかに揺れる。この調子だと、明日も晴れそうだ。そう思いながら、少女は胸を撫で下ろした。 「セイラ」  彼女が名を呼ばれて振り返ると、父が茅葺きの家から出てきていたところだった。がたいの良い身体を茅葺きの暖簾から這い出させて、のそのそと薪場に向かう。 「明日は忙しいんだから、早く寝なさい」  低く威厳のこもった声で薪を拾い集めながら言う父にセイラはものともせず、満面の笑みで空を見上げた。 「空の調子を見ていたのよ。明日もちゃんと晴れるかなって」  夜空に浮かぶ星々が呼応するようにあちこちで瞬く。南東から風が吹いてきたから大丈夫、そう言って父の方にくるりと身を翻す。 「心配しなくても、あの日はいつも晴れるさ」
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