星の送り人

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 その時、セイラが小さな声で「ごめんなさい」とつぶやいた。父は音もなくそちらに顔を向ける。 「わたしまだ、子どもだった」  しおらしく囁かれたその声からは、反省の色が見てとれる。父はセイラが焚火に翳している両の手のひらに目をやった。彼女の傷一つない手のひらは、混じりけのない炎の色を映して赤く彩られている。父は目を伏せて、ため息混じりにつぶやいた。 「まだ子供のままでも、良かったんだけどな」  言葉の余韻から後悔が滲み出て、伏せられた双眸からは光の気配が消えていく。過去と未来を憂いながら、父の視線は記憶の彼方に向けられていた。
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