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「お父さん」
凛とした声が夜闇に煌めく。父が顔を上げると、セイラがむすっとした表情を浮かべて見ていた。
「さっきも言ったように、わたしは大丈夫だから」
先程の弱気な態度は何処へやら、気丈な態度ではにかんで、セイラは言葉を続ける。
「お父さんやおじいちゃんの背中を見て育ってきたんだよ。星守の役を担うこと、むしろ誇りに思ってるんだから。お父さんは星守の仕事に誇りを持ってないの?」
父は風の声を聴くように一度目を伏せてから、星々が輝く空を見上げた。そして、星は、と前置きして、言葉を紡いだ。
「願いの結集だと思うんだ。皆が祈りを捧げれば、星はそのために命を燃やし、村を救い、平和という希望を与えてくれる。そんな星を、皆の願いを守るのが私たちの役目だ」
やわらかな眼差しを湛えた瞳の中で、星の輝きが波打つように瞬く。その顔は、星守という仕事に誇りを持っている顔だった。だが、その表情は途端に曇り、視線は自身の手のひらに向けられる。この世界で一番痛々しい星が、炎の光を浴びて手のひらの中でゆらゆらと生きているようだった。
「だがその分、懸けられる期待や重圧も大きい。傷も負う。その重荷を、お前に背負わせたくは、なかったんだ」
言葉を握り込むように、拳がつくられる。束の間、火の粉が唸りを上げて空に舞い上がった。
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