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「お父さん」
土を踏み締める音とともに立ち上がったセイラの声が降り注ぐ。再び二人の瞳がかち合った時、ごおと炎が風に靡いた。セイラの熱を帯びた眼差しを後押しするかのようなゆらめきだった。
「わたしのこと大切に想ってくれるのは嬉しいけど、もっと信用してほしい」
両脇で握り込んだ拳の力がいっそう強くなる。意志を持った声が、夜に溶けずに父のもとに確かに届く。
「わたしはお父さんの娘で、星守の血を受け継ぐ者。どんなに辛くても傷ついても役目を果たす覚悟はあります」
父をまっすぐに見つめるセイラの眼は、背後に瞬く星よりも遥かに尊い輝きを放っていた。父はしばらく凛々しい娘の姿に目を瞠っていたが、フッと笑みをこぼした。そうだな、心配いらないな。そうつぶやいて、セイラに優しい笑みを向ける。もうわだかまりなどないような、晴れやかな笑みだった。セイラは笑顔で頷いて、父の隣に軽やかに座る。
「お父さんに心配かけさせないくらい立派な星守になるから、もっといろいろと教えてね」
そう言いながら、首をかしげて子供っぽくはにかむ。父は苦笑いを浮かべながらも、それでも彼女を愛おしそうに見返した。南東から風が吹いて、あたたかな空気が二人を包む。寄り添う親子の姿を満天の星々が楽し気に煌めきながら見守っていた。
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