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広場の中央から少し外れたところに、神殿はあった。村人が暮らす茅葺きの家とは違って、その建物は竹で組まれた頑丈な作りのものだ。緑の染料で染められた麻布の暖簾をくぐると、セイラは神殿の中に足を踏み入れた。
敷き詰められた竹のおかげで外の光は一切漏れることはなく、ただ純粋なる闇がそこには広がっていた。その中に浮かび上がるようにして、神殿の中央に橙色の光が煌々と輝いている。中心部は穢れのない光量に満ちていて、端々に揺れる光の波紋は脈動のように規則的に屋内を漂っていた。セイラはその光に近づいて目線を合わせると、微笑みかける。
「明日はよろしくね。お星さま」
答えるように、一瞬だけ光が輝きを増したように見えた。セイラの前、神殿の台座に大人しく腰を据えているのは、まさしくひとつの星だった。
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