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俺はショルダーバッグからお財布を取り出し、お金をドローしたのだが、よりによって1000円札が1枚しかなかった。
非常に申し訳ない気持ちになりながら、その占い師さんに1万円札を手渡した。
「しばしお待ちを」
占い師さんの格好は、頭から濃い紫色の頭巾のようなものを被っており、口元も光が少し透けるくらい薄い布で覆っていて、同じ色の丈の長いローブのようなお召し物を羽織っている。
足元は、かかとが少し高い革靴を履いているようで、出で立ちはまさに魔女。
しかし、占い師と聞いたら、どうしてか人生経験豊富そうふくよかなマダムを想像したのだが、この女性は結構若い。俺と同じくらいか、もしかしたらちょっと年下かもと。
目元と声色からの判断だがそんな印象だ。
だから、学園祭で張り切った大学生が頑張って魔女のコスプレをしているというそういう想像に至ってしまうわけだ。
「お待たせしました」
暗幕の奥から再び現れた占い師さんは、俺の目の前で丁寧に数えた10枚の1000円札を俺に手渡した。
「お手数お掛けしました」
「いえ」
俺はその両替してもらった1000円札を改めて祭壇に捧げて、出てきた札をその占い師さんに渡した。
「それではこちらへどうぞ」
ゆっくりと歩く占い師さんに着いていった先は暗幕の中。出入り口を覆い隠すように斜めに垂れ下がった暗幕を少し手で退けながら部屋に入った。
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