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「どうぞお掛け下さい。コーヒー、飲まれますか?」
コーヒーかあ。コーラが飲みたいです。
「ええ、いただきます」
占い師さんはさらに奥にある暗幕の向こう側に入った。
部屋の中は天井の蛍光灯は消されていて、部屋の隅にある暖色の間接照明と電気蝋燭の灯りだけでちょっと薄暗い感じ。
どこかでアロマキャンドル的なものをやっているのか、落ち着きのあるちょっと香ばしい香りがして、サーキュレーターの風を少しだけ感じる。
部屋の真ん中には、四角いテーブルが置かれていて、これにも濃い紫色の布が足が見えなくなるまで掛けられている。
俺はその手前側に置かれている椅子に腰掛けた。
しばらくして占い師さんがまた現れ、コーヒーが注がれたカップとお菓子の包みを俺の目の前に差し出した。
そしてそのお菓子は俺にとってはよく見慣れたもの。監督室でよく盗み食いしていたそれ。
ビクトリアガレット。
親会社の看板商品であった。
「それで、今日はどういったご用件でしょうか」
「実はわたくし、北関東ビクトリーズというチームの所属しているスタッフでして、なかなかチームの調子が悪くて開幕から勝てていなくてですね。なんとか御教授を頂ければと思ってやってきた次第でして………」
俺は大嘘をついた。
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