優しい空気と花火。

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私は慧ちゃんの言葉をしっかりと受け止めるように聞いた。そうだ、と頷いた。 私は外の世界に興味の薄い慧ちゃんとなら気負わず楽しく恋愛ができるかも、なんて腹の底では思っていた。 恋も知らないのに恋にたいして義務感と憧れを持つ自分が何者なのか分かるのかもしれない、と。 「なんで、」 「私も、弓花と一緒……」  慧ちゃんは控えめな優しい笑顔を見せた。 「弓花と話したときすぐに分かったの。おんなじ場所で息して生きてるって思ったから……」  慧ちゃんはそっと自分の手をテーブルの上に置いて、私を見つめた。 私はおずおずと自分の手で慧ちゃんの柔らかな手の甲を優しく包み込む。 「一番、仲の良い友達だと思ってる。それが私にとっての最上級なの。……それでも、私と付き合ってくれる?」 緊張したような慧ちゃんの声。 握った手も少し汗ばんでいた。私はポッキリと割れていた自分の心がパチン、と一つにくっついたような音を聞いた。 わたしは慧ちゃんの横だと息がしやすいんだ。 「もちろん。……一緒にいて」 私は緊張していたけど、それでも自然と微笑みが浮かんできていた。 慧ちゃんと一緒にいられるのなら幸せだと思った。 (了)
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