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「私、花火って別段、見なくてもいいや、って最初は思ってた」
慧ちゃんが、ぽつりとそう零した。
私はソファで眠り始めたジロウを見つめながらぼんやりと花火のことを思い出していた。
「でも、見たら見たで、ちょっと楽しいな、って思った」
「……私もそうだったかも」
慧ちゃんの発言に、私は自分のことに一つ、気づいた。当たり前のように毎年花火見ているけど、だからといって必ず見なきゃ、と思っているわけでもないということに。
惰性といえば、惰性。花火を見るため、毎年のように人がたくさん集まるのを実は不思議に思っている。
そんなにたくさんの人が楽しみにしているのなら私も見ておこうかな、とそれくらいの気持ちだったのだ。
でも、改めて慧ちゃんと見ていると、綺麗だとも思った。
ふと、以前から静かに思っていたことが私の頭を過った。
「……もしかして、私たちっていろいろな興味関心が人より薄いのかな」
そんな素朴な思いがぽつりと口から溢れていた。
それは慧ちゃんが家の向かいに越してきてから、一緒に過ごすうちに感じていたことだった。
私はずっとそれを言語化できないでいたけど、慧ちゃんを見ているとまるで鏡のようにそれが自分の内側に響いてくる。
慧ちゃんが私の恋バナを面倒くさそうに聞いているとき。
心のどこかで「分かる、分かる」と頷いていた。
二人で外にご飯を食べに行ったとき、「どれでも美味しいだろうから何でも良い」と言った慧ちゃんに「分かるなぁ」と心の中で思っていた。
花火も、きっとそうだったのだ。
私が慧ちゃんに惹かれているのはもしかして……
そこまで考えてから、ふと慧ちゃんが伏し目がちに暗い顔をしていることに気がついた。
「興味関心が薄い」なんて人に対して言うもんじゃなかったと、私は反省する。
「ごめん…… 失礼なこと言ってた。私たち、ってなんか勝手に入れちゃって…… わ、私だけだから」
私が慌てて謝ると、
「そういうのじゃないの…… そうだな、って思ってたの」
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