優しい空気と花火。

　恋愛するのは「楽しい」と思っていた。

でも、楽しいの中には、ほんの少し義務感のような感情もあって、私はいつももやもやとした気持ちを持て余していた。
だから、一通り、経験してみた。

自分の中のもやもやを消すべく、男の子と付き合ってみたり、女の子と付き合ってみたりした。
私は、これでも周りが気になって仕方がない女子高校生であったため、女の子とお付き合いするときは慎重だった。
恋の相手はいつも他校の子だった。噂になるのが怖かったから。

　しかし、今度の恋は少し様子が違った。
今度の相手は、家のお向かいに越してきた花井さんというお宅の娘さん。
慧(けい)ちゃんという名前で、私と同じ高校に通うことになった。
思いきり近所、同じ学校。うっかり両想いになったらうわさになるかもしれないと頭の隅でそう思った。